きかせて!あなたの和室のくらし
Tell Me About Your Life in a Japanese-Style Room


本作は、茨城県取手市・井野団地の和室をめぐるくらしの変遷をテーマにしたアートプロジェクトである。
団地の和室は、住民の入居時期に応じて少しずつリノベーションが行われている。私はそこに住む人や訪れる人々にインタビューを重ね、個々の「和室の記憶」としてのエピソードを収集し、冊子としてアーカイブ化した。活動に際しては、天然い草を用いた「畳の衣装」を制作し、住民との対話のきっかけとした。衣装をまとうことで場に特異な雰囲気が生まれ、話し手が自然と「アートの空間」に参加している感覚を抱けるようにした。実際のインタビューでは、住民たちが自身のくらしや家族の記憶、震災の痕跡まで多岐にわたるエピソードを語ってくれた。時には住民の自宅へ招かれ、プライベートな空間に宿る個人の歴史を体感する場面もあった。
調査を通して見えてきたのは、80代から90代の住民が中心でありながらも、互いに差し入れや手作り料理を分け合い、会話を楽しみ、人との関わりを大切にしている姿だった。一方で家族を失い、一人暮らしを続ける人も多く、地域のイベントや団地の交流拠点が孤立を和らげる大切な場となっていることが分かった。
最終的に編纂した冊子は、建築史や工芸史とは異なり、和室を「そこでくらす人の声」を通じて描き出すものとなった。畳を懐かしむ声、古臭いと感じる声、子どもに体験させたいという願いなど、世代ごとに異なる「和室観」が交差している。
合理化が進む社会において、和室が必需品ではなくなりつつある現状を反映する一方で、人々の記憶や感情に深く結びついていることを示した。





そうぞうする団地
いこいーの+Tappino
活動期間:2025年4月〜5月
冊子発行:2025年9月
主催:特定非営利活動法人 取手アートプロジェクトオフィス/東京藝術大学
協力:UR 都市機構/地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(東京藝術大学)
取手井野団地、いこいーの + Tappino でお話をきかせて下さったみなさま